ギリギリ
すごい設定だ、と思った。
お嫁さんの亡くなった元夫の母親と仲良しの夫。
元夫の母親である静江がまた凄い人だと思う。
良い意味でも、悪い意味でも。
息子のことが何よりも誇りだったのだろう、
…ことは分かるのだけれど、元嫁の旦那の健児に
息子のことばかりを話すシーンには、正直うんざりした。
人のことを褒めるのは決して悪いことではないし、
それが亡くなった子供のことだったら尚更だ。
むしろ、こんなにとことん愛して、信じて、受けとめるなんて自分にはそんな経験がない。
だけど、どうして人が褒められているところを見る時は晴れ晴れとした気持ちになれないのだろう。
亡くなった息子の一太郎が浮気をしていた、という事実で少し嬉しくなってしまうほどだった。
一太郎の浮気相手の女にもイライラしたし、
健児の妻の瞳のことも正直、好きになれなかった。
だけど、読み終わったときには、不思議と静江のことは好きになっていた。
寂しいような、悲しいような、不安なような、
だけどそれだけじゃないと思わせる、今まで読んだ小説では味わったことのない切ない終わり方だった。