罪のあとさき
殺人には色々な理由がある。
殺しても良い理由、というものはないとしても
仕方ないよね、と思う理由はある
と思う。
私は猫がとても好きだし、そもそも殺してみたかった、という動機で動物を殺す人間は許せない。
この物語は、
14歳で同級生を殺害してしまった卯月と、
同時同じクラスだった楓が大人になって出会うところから始まる。
卯月は子供の時から何かしら脳の障害が疑われているが、何の障害がは明らかではない。
見たものを写真のように記憶できる能力がある一方で、幼稚園から中学に上がるまでずっと一緒だった同級生の名前は覚えられない。
そんな卯月は中学で渡辺楓に出会い、一目惚れをする。
親しい友人や、好きな女の子の名前は覚えられるようだ。
クラスではジロちゃんと、永森と過ごしている。
妹の千尋も何かしらの発達障害で、3歳になっても言葉を話すことは出来ず、赤ん坊のように泣くことで何かを伝えようとしている。
そして母親はノイローゼ気味なのか、少し様子がおかしい。
楓は、初め殺人の過去がある卯月とどう接してよいのか迷うが、少しずつ、惹かれていく。
卯月は何かどこかが変わっていて、人を殺した、ということに罪の意識がないのではないか、とも思える。
「これは殺すべき命だ」
と思って実行した卯月が怖い。
「殺すべき命」とは、何なのだろう。
やはり普通ではない。悪い意味で。
千尋が唯一言葉を放つシーンがある。
「こわい」
というのだ。
母親と、父親と兄に向かって。
こわい。こわいよ、確かに。
卯月が永森を殺した理由をみていても、
仕方ないよな、とは思えなかった。
ただ、永森は最低な人間だとは思う。
この物語は何となくハッピーエンド風だが、
この後はどうなったのだろう。
少なくとも、私が楓だとしたら、真実を知った時に
それでも卯月と一緒にいられる気がしない。
あのあと、2人はどうなったのだろう。