あめよび
美子と輝男のやりとりは心が痛くなるほど、分かる。
「本当に愛しているなら、何故結婚してくれないの?」
これだ。
輝男が美子のことを大切に想っていることは、分かる。
ならば何故そこまで頑なに同棲も結婚も拒むのか。
美子を自分に置き換えたとしても、ほぼ同じ会話をしそうである。
なんで結婚にここまで囚われてしまうのかも、
よく分からない。
分からないけれど、
「私のこと、好きなの、嫌いなの」
「だから、好きだよ、そう言っているじゃん」
「そんなの、言葉ならいくらでも言える。ちゃんと行動で表してほしい」
そうなのです。その通り、と思ってしまうのです。
さらに、
「結婚とか※諱とかさ。おれが一番好きだって言ってるんだから、それでいいじゃない」
「ごまかしてる。結局、私のことはあんまり好きじゃなかったんだね」
そう。そういう発想になってしまうのです。
心が痛い。本当に。
※諱とは"いみな"と読み、古い風習が残る村などで自分につけられたもう1つの名前のこと。
この物語では、諱は結婚する相手にしか教えない、という風習の村で輝男は育った。
輝男のような男の人は、ある意味で子供のように素直に自負のやりたいことをやっていて、すごく惹かれる気持ちはよく分かる。
それでいて、譲れないものは何がなんでも譲らないのだ。
これが切ない。
こういう話は身につまされるのだ。
私自身も、結婚したくて堪らないのに、いつなの?という不安定な心持ちだから。
このての話は自負のことのように重い気持ちになってしまう。
が、好き。
怖いものみたさ、というやつかも。